タイトルに惹かれて「明日世界が終わるとしても」を見てみました。
私なりの解釈をまじえて感想を書き残します。
※ネタバレを回避したい方はここで引き返すことをおススメします。
相対する二つの世界と二人の自分。
93分のCGアニメ。
内容は、ありがちな青春の一部から、意識の世界をバトルアクションとして描いた作品。
作画が特徴的で美しい
作画は、CGアニメのために独特の美しさとなめらかな動きに注目です。
意識や異世界転送やら、やたらと三角形が使用されているなど、理数系の雰囲気が漂っています。
バトルシーンも美しさと迫力を兼ね揃えており、特にラストバトルは見ごたえがありました。
二つの世界の意味
この二つの世界と二つの自分というのは、意識が創り出している世界なのかなと私は感じました。
失うことが多かったシンが、今後どのように生きて行くのかという葛藤が生み出した、仮想現実のようなものではないでしょうか。
確かに、今も私たちが生きている世界も、本当のことは誰にもわからないもの。
パラレルな世界はあると思えばあるし、考えもしなければ存在しないことにもなる。
意識の分離が生み出した、別の世界で在り、もう一人の自分でもあるということでしょう。
この長い物語は、シンの中でだけ展開されていたものだと思われます。
様々な人物を創り出し、物語を創り出し、自分なりにどうすればいいのかを導き出すために、シンは自分と対話していたのでしょうね。
今が幸せで在ること
感じることは、「仮にそういった世界だったら」ということを意識して生きれば、今がどれだけ大切であるのかということ。
力による支配や、恐怖を与えて統治する世界は、やがて崩壊していくもの。
私たち日本人は、そのことをよく理解しているからこそ、今の文化を生み出しているとも言えます。
ケンカをしても、競い争っても、何もいいことはない。
勝ち負けを決めることや、どちらが正しいのかを決めて、それを同じにしようとすると、互いに傷つけ合うだけとなるのは間違いありません。
作中の日本公国に感じる違和感はそこにあります。
「邪魔なものは排除すればいい」と考えがちですが、仮にそれを繰り返していけばどうなるのか?
日本公国の思想で生き続ければ、最後にはたった一人になるだけです。
一人になって、そこからどう生きて行くのでしょうか?
このことからわかるように、誰かが悪いといった考えを持つよりも、誰にでも生きる意味があり、全ての人たちがそこに生きているからこそ、今の自分も生きていられるということ。
当たり前の今が、どれだけ幸せであるのかを感じられる物語でしたね。
今やるべきこと
コトリはシンを守りたいという形で始まりますが、シンは自分の中にあるコトリへの思いに気づき、「コトリを守りたい」という気持ちが生まれます。
この「コトリを守る」ということの意味を辿るために、この壮大な物語をシンが生み出し、最後の答えへと辿り着いたのかなと感じました。
「守る」とは、一体どういうことなのか?
まわりにいる敵から守る?
そもそも、「敵がいる」という意識が「敵」を生み出すわけであって、最初から敵も味方もいないのが真実です。
では、「守る」とは何なのでしょうか?
シンの辿り着いた答えは恐らく、「守る」の言葉を変えて「今を大切にする」ということではないでしょうか?
あらゆる妄想を巡らせた時に、今が幸せで在ることに気づく。
そして、いつ誰がいなくなるのかわからない。
実際に、両親という大切な家族を失っているために、その答えを導き出せたのでしょう。
いつ世界が終るかわからない。
いつ自分の人生が終わるかわからない。
それは、誰にも平等に与えられたものであって、だからこそ今が、生きていることが大切で、一緒にいられること、話せること、触れられることが奇跡のような幸せな経験であることに気づけます。
ただ、これだけでえは終われるものでもなくて、「だったらどうするのか?」ということです。
シンは、ラストシーンでコトリに「好き」という気持ちを伝えることが出来ます。
これが、「大切にする」「守る」の答えなのでしょう。
素晴らしい作品でした
二つの世界で展開されるバトルアクションのように見えますが、私には沢山のメッセージが乗せられているように感じ、しっかりと伝わりました。
生きているうちに、会えるうちに、出来るうちに出来ることをやっておいたほうがいい。
失ってから気づくことは沢山あるものですが、過去にいつまでも囚われるのではなく、そこから学んですぐに行動しなければ、きっと後悔してしまう。
また、近年の量子論で言われている、物質界の全ては意識によって創造されているということも、作中に含まれていたように感じます。
また、こうして作品に触れることによって、私の私生活にも学びとなります。
感想や解釈は、それぞれが自分なりの形に切り取るものですので、これといった正解はありません。
それでも、素晴らしい価値観に触れられた一作だと私は思えました。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。